ウサギの切歯の歯科学 Susan Brown, DVM ---------------------------------------------------------------------------- 人間は歯の並びが悪くても処置しなくてもかまわず、また子どもだとして淘汰される こともないのは幸いだと思います。ウサギたちは歯列矯正器を着けることはありませ んが、私たちはこの2本の歯についていろいろ試みてみたいと思います。 シカゴの Midwest Bird & Exotic Animal HospitalのDr. Susan Brownは、一つの選 択としての外科的治療について、適切な根拠を示してくれました。私は自分のウサギ に抜歯を考えたことはありませんでしたが、Dr. Brownと話したことで、一部の不正 交合のウサギにとってはこれが最も好ましい解決法だということを知りました。 Dr.Brownは飼い主に便利だとか、家具をかじってしまうといった行動の面から抜歯を 行ったりはしませんが、そのウサギにとって利益となる場合、あるいは健康面で大き く改善がある場合に行っています。 次号では、高齢のウサギや障害のあるウサギ、重傷のウサギなど、手術が実行不可能 な場合の治療について述べます。 ウサギには歯牙疾患が極めて多く見られます。歯牙疾患には様々な原因があり、切歯 の外科的な治療についても検討してみたいと思います。 ウサギには6本の切歯があり、4本は上に2本は下にあります。上顎の2列目の歯はpeg teethと呼ばれ、顔を見たときにまず見ることが出来る前歯のすぐ後ろに位置しま す。これらの歯は、主に食餌をくわえて断ち切るための役割を持ちます(この歯は電 気コードや電話のコードをかじるのにも役立っています)。 ウサギの他の歯は、口の中の両側の後方に位置しています。これらの臼歯は食物を細 かく砕くために用いられます。ウサギのは歯すべてウサギの生涯を通じて成長し続 け、噛んだり、歯と歯をすりあわせたりすることで磨耗して維持されます。ウサギの 歯は長さを適切に保つために噛む木の枝やその他のものを必要としません。ウサギの 歯はものを食べるときにお互いに歯と歯がこすれあって磨耗します。休んでいるとき などにもウサギが歯をすりあわせている音が聞こえるかも知れません。 不正交合の原因 歯の並びが乱れると、過長歯を見るようになります。不正交合には3つの原因があり ます。 1. 遺伝性 −生まれついてのもの。ドワーフやロップイヤーなど、吻の短い種によ く見られます。 2. 外傷性 −顔面への外傷により、正常な歯の成長が阻害される場合。 3. 感染性 −歯根部への細菌感染が歯の伸長方向に影響を与える場合。 これらの異常はどの歯にも起こり得ますが、ここでは切歯の治療について述べたいと 思います。切歯に不正交合が見られた場合は、必ず臼歯の状態も確認して下さい。臼 歯に異常があったばあい、これが原因で切歯の不正交合を招くこともあります。切歯 のみ整復しても、臼歯の治療が看過されれば、治療には失宜があることになります。 活発で機敏に動いてはいても、食事をとらなくなったウサギでは、臼歯の過長とその 鋭利な歯列は良く見られる原因です(食欲の無いウサギがすべて毛玉症であるわけで はありません)。ウサギの臼歯の診察は、人間用の耳内鏡や犬用の膣鏡を用いること で容易に行うことが出来ます。 切歯に生じるた不正交合は、ウサギにとっては何の利点もなく、不快なものです。ウ サギは良く動く唇で餌をつまみ上げ、口の中に取り込みます。切歯の不正交合の治療 の一つの方法は、定期的に切断することです。犬用の爪切りを使う人が多いようです が、これには危険も伴い、歯が砕けて根本まで裂けてしまうこともあります。これは 痛みを伴うだけでなく、歯根部に感染を起こすこともあります。切断することが考え られる場合、私たちはヤスリの円盤や歯科用円鋸のついたDremelの器具を用いること を奨めます。 長年に亘ってウサギの不正交合の処置をし、飼い主にそのやり方を指導もして、他に より良い方法があることを確信してきました。多くの飼い主が4から8週ごとに処置を しなければならないことに疲れ、歯の伸びすぎを招いたり、ウサギが傷つくことさえ ありました。多くのウサギが大変神経質になり、歯の処置をする際に抑えるのが難し くなったウサギもみています。切歯を抜歯することで良い結果を見た獣医師の話も聞 いています。 私がはじめて切歯の除去手術を経験したのは、5歳のドワーフ種で、小さな頃から不 正交合があり、頻繁に強制給餌を行わなければならないウサギでした。このウサギは それまで平均的な体重に至ることはなく、常に健康状態が不良でした。そのままでは 死に至ることも考えられたため、飼い主は思い切って切歯を除去することを選択しま した。 私は麻酔にはケタミンとバリウムを使用し、適切な抜歯が行えました。抜歯は私が考 えていたよりも容易に行うことが出来ました。抜歯後の穴が閉じるまで、手術後10日 間は抗生物質を投与しました(縫合は必要ではありませんでした)。その週の終わり にはウサギは餌を食べ始め、以前よりも体重が増えて行きました。より活発になり、 精神的にもきびきびしてきたようでした。 最初のウサギからこれまで私たちは25頭以上のウサギにこの手術を行ってきました。 手術によって状態が悪くなったウサギはいませんでした。ウサギたちは手術から1-2 週間のうちに干し草など、すべての餌を食べるようになりました。手術によってどの ような結果が期待できるかを手短に述べます。 手術後 手術後、当日は通常ウサギはおとなしく、餌も食べません。しかし、自宅に帰って手 術後5時間ほどで餌を食べたウサギもいました。通常翌朝にはウサギたちは水を飲 み、ペレットをくわえあげるでしょう(ペレットは彼らにとっては最も唇で持ち上げ やすいからでしょう)。彼らに与える野菜はくわえやすいように2インチほどの大き さに切って与えるように奨めています。あまり小さく切りすぎると唇でくわえにくく なるので避けます。また、うまく食べられるようになるまでは、干し草を3ー4インチ の長さに切って与えるように奨めています。ウサギの状態が良ければ、強制給餌は48 時間は行わないで下さい。強制給餌はウサギにとっては不快なことで、また自分で食 べるようになるまでにより時間がかかることになってしまいます。 手術から2ー3日のうちには、ウサギたちの採食量は手術前の75-100%にまで回復しま す。手術後に特定の餌を食べなくなったり、干し草に興味を示さなくなるなど、しば しば手術によって劇的に食餌の取り方が変化するウサギもいますが、私たちの経験で は90%が手術前の餌を食べるようになっています。 手術後少なくとも10日は抗生物質を使用することを奨めています。その時点で、動物 病院でウサギの診察を受け、抜歯部位からの分泌物などが見られず正常に回復してい るかを調べます。原疾患の不正交合による感染が疑われる例では、手術前にすべての 歯についてレントゲン撮影を行い、細菌培養も必要となるかも知れません。このよう な場合の抗生物質による治療はより長期間継続する必要があります。 先天的な不正交合の場合、早期に手術を行えばそれだけ術者にとっても、ウサギにと っても容易に行えます。この手術に関する情報を求める獣医師は私たちの事務所へご 連絡下さい(312/344-8166)。 結論として、ウサギの切歯の過長歯による問題を改善する方法として、この手術は考 慮すべきものだと考えます。飼い主にとっても、ウサギにとっても利点があることが 示されています。この治療方法を行うことで、多くのウサギが淘汰されることが無く なれば嬉しく思います。 「この手術によって、術後の状態が悪化したというウサギは、これまで見ていませ ん」。 ---------------------------------------------------------------------------- House Rabbit Society は非営利の保護教育活動を行う団体です。主旨に賛同し、こ こにある情報を有益なものと感じられた方は是非寄付にご協力下さい。 8-Feb-97 Paige K. Parsonsにより改訂