closeup of a house rabbit eye

ネクロプシー(剖検):死後の知識

ウサギの飼い主にとって、愛兎の死ほど–特に死が突然であったり予想外であった場合–、つらいことはないでしょう。多くの場合、飼い主は悲しみに暮れて何も考えられなくなってしまうかも知れません。しかし、ここが大切な決断のときなのです。剖検をするべきか否か。

多くのウサギの飼い主は、喪失によるあらゆる感情を押さえ込もうとするのに精一杯で、剖検について考えることなどできないと感じています。あるいは、剖検についてよく知らないまま、部分的な(多くの場合誤った)情報に基づいて決断してしまうことがあります。

数年をかけて、私は様々な理由により剖検を断ったうさぎの飼い主達と話してきました。理由は、「もう十分に診てもらった」「彼の体をめちゃくちゃにしたくない」「すでにたくさんお金をかけたのに、剖検のためにさらにお金をかけてもウサギは戻ってこないのに、なぜわざわざ?」といったものです。

この記事の目的は、飼い主が悲しみに暮れているときに重要な決断をしなければならない場合に備え、情報を理解し的確に評価できるように、剖検について説明することです。

ここに、剖検について最もよく聞かれる質問についての回答を示します。

1. 剖検って何?

剖検とは、簡単に言うと、死因の特定のために死後に行う手術の一種です。人間ではこの作業は剖検(オートプシー)といいます。肉眼で体の構造や主要機関を観察することを「肉眼所見(直訳では肉眼剖検)」といい、もっと精密な剖検は顕微鏡診断、時には採取組織のラボでの検査を含みます。

2. いつ剖検は行われるべきですか?

死後変化はすぐに起こり始めるので、そして死後変化は剖検の結果に多大な影響を与えるので、剖検は早ければ早いほどいいでしょう。ウサギの組織はとても傷みやすいので「うさぎの剖検はできれば死後6時間以内に行うべきでしょう」と、Catnip & Carrots Veterinary HospitalのSaver先生はいっています。剖検までは遺体は冷蔵庫で保存すべきです。冷凍解凍によって細胞が壊れてしまうので、冷凍は避けましょう。

3. 剖検はどのように行われ、どのくらい時間がかかるのでしょうか?

肉眼所見では、開腹後に臓器と構造に異常がないかを観察します。詳細の剖検では組織、時には体液などが採取されます(写真も撮られることがあります)。何をするかによりますが、平均30分から1時間、時にはもっとかかります。剖検が完了するとうさぎの遺体は生きているウサギの手術を同じように縫合されます。それから、飼い主の意思によって埋葬や火葬のために遺体は返されるか、直接破棄されます。

4. 剖検っていくらお金がかかるの?

脳や脊髄など、神経系の検査を含む剖検(エンセファリトゾーンの疑いがある場合)はもっと難しく、非常に長くかかり、費用も大変高額になるため、滅多にありません。

しかし、病理研究室に検査の提出された組織や体液の検査代は別途で、これらの検査代は高額の追加料金になりえます。Center for Avian & Exotic MedicineのPilny先生によると、「組織のサンプリングが最も高額で生検の報告は部位によって130ドルから450ドルかそれ以上になりえます」。

剖検にも他のものを同じように費用がかかります。病院や獣医師によって値段は違います。何がなされるかにも寄りますが、獣医師による作業そのものは大体100ドルから200ドルでしょう。多くの獣医師は自分の患畜であった動物の肉眼所見は飼い主への厚意として、低額または無料で行います。

5. 本当にこれらの検査の結果が全部必要ですか?

そういうわけで、いくつかの答えを出すためには、ほとんどの場合は肉眼所見で十分です。例えば腫瘍の場合、どんな種類だったかを追加料金で特定できなくても、顕微鏡なしで肉眼で見られればそれで十分です。幽門閉鎖(多くの場合鼓脹症に含まれる) も肉眼所見で見つける事ができます。組織異常(色、大きさ、形、構造)も観察できますが異常所見の原因を特定するためには更なるラボ検査が必要なこともあります。

答えは「場合によります」。できるだけ詳しい答えがほしい飼い主のためには詳細のラボ検査が必須ですが、多くの飼い主は費用のために断念します。Symphony Veterinary CenterのCampbell先生は、「悲しんでいる飼い主に、後学のために低額または無料の剖検をさせてもらうのを頼むだけでも大変なのに、重要な顕微鏡の病理検査にもお金を出してもらうのはもっと大変です。」

6. 私のウサギは戻ってこないのになぜ剖検を検討しなければならないのですか?

剖検はさらにあなたの獣医師に驚くべき学びの機会を提供します。Pilny先生は「剖検は臨床医の裁判のようなものだと獣医学課程で教わった」といいます。「それはただの学びの場ではなく、決定的な診断ができ、死の前の検査結果を支持し、珍しい病気のケースを認識し、治療過程が正しかったかを確認するものです。」

剖検を検討すべき最後の理由は大抵の場合、予想外にも深い精神の安定をもたらすということです。

Campbell先生は「健康であってもそうでなくても、どんなウサギの剖検も大変に役にたちます。自分自身で構造を見ることによって学ぶことにとって代われるような本やビデオはほとんどありません」といいます。ダコタ獣医センターのGilStanzione先生は「剖検によって同じ家、または他にいるウサギを助けることになる情報を収集することができます」と付け加えます。剖検は獣医師が、飼い主が(多くの場合経済的な理由で)ウサギが生きているうちに診断テストを断った場合の診断が正しかったか(そうでなかったか)を確認する手段でもあります。

剖検はいろいろな意味で貴重ですが、もっとも(かつ唯一の)明確なものを挙げれば死因の特定のためです。剖検で死因が感染だとわかれば同じ家で飼われているウサギを守ることができます。死因が特定不明の毒素だとすれば他の死を予防するための重要な情報となります。

ウサギの死因を知らないまま、多くの飼い主は自分(または獣医師)がウサギの世話や治療において何か悪いことをしたのではないかと苦悩し続けるのです。

ドナ、シェリダンさんはRabbit Rescue & Rehabの長年のボランティアでハウスラビットソサイエティーの認定教育者でもあります。彼女はウサギのフレッドの死で悲観に暮れていました。「一度も病気をしたことがなかったのに、フレッドはちょっとした鬱滞の後にあっけなく逝ってしまいました。私は何か症状やサインを見逃したのでしょうか?なぜフレッドは逝ってしまったのでしょうか?私はこれらの質問の答えを知る必要がありました。」剖検はこれらの答えを提供することができます。フレッドの剖検は、どこかに責任を感じていたドナに大きな安らぎをもたらしました。「私はSaver先生が結果を私に告知したときの言葉を一生忘れません。フレッドは癌が蔓延していて、助からなかったでしょう、と。フレッドの剖検結果は私にとって贈り物でした。」

数年前、私たちのフォスターの中で二歳半ほどの二匹の兄弟ウサギが別々の家に引き取られていきましたが、突然どちらも30日以内に全く何の前兆もなく亡くなりました。それぞれの飼い主が認めた剖検によって、どちらのウサギも同じ原因でなくなったことがわかりました。先天的な心臓疾患でした。剖検なしには、飼い主たちはこの不可思議な若いウサギたちの死に対して責任を感じていたかも知れません。

Saver先生は最近、戸外で雄ウサギを一緒にいる所を救助された雌ウサギを避妊しました。雌ウサギはやや痩せていたものの、妊娠の可能性が大変高かったので避妊することに決定しました。手術は何事もなくうまくいき(妊娠していないことがわかり)、ウサギは次の日に返されました。三日後、ウサギは食欲不振となり治療のために入院しましたが次の日になくなりました。剖検の結果、1.5フィートの条虫が何匹か見つかり、空腸の一部を閉鎖していました。空脹は腫れて変色しており、組織壊死の証拠を示していました。「もしこのウサギがちょうど里親に引き取られていたら、新しい飼い主がどんな思いをしたことか、想像してみてください。」Saver先生はいいます。「剖検なしには避妊手術で何か問題があったか、回復時に適切に面倒を見なかったかと思うに違いありません。」

HRSの創始者であるマリエル・ハリマンさんによると、彼女の娘のタニアがあるとき長期の抗生物質治療下にある、身体障害のルディというウサギの面倒を見ていました。彼女はいつものようにルディを水ボトルのそばに動かしてやりました。彼が水を飲まなかったので、彼女は多分のどが渇いていないのだろうと思いました。数時間後、ルディは亡くなりました。タニアはひどく罪悪感を感じ、どうにか助けられたかもしれない何かを見落としたのだと思いました。剖検をするまでは。

肉眼所見では、外耳はきれいだったものの、両方の鼓膜(内耳)は膿でいっぱいでした。ウサギの脳は生検に提出され結果は重度の髄膜脳炎でした。タニアがルディを助けるためにできることはなかったのです。

ほとんどウサギの飼い主にとって、剖検は非常に難しい時期に考えなければならない、難しい問題です。どんなことが関わってくるかについて、前もって考えておくと、その時期が来たときに考えやすくなります。包括的な剖検のコストが単に高すぎる場合は、獣医師に肉眼所見だけでも見てもらえるように頼んでみましょう。これはあなただけでなく、あなたの獣医師にとっても価値のある情報をもたらします。「個人的には私は常に私たちが正しかったか、患者にとって正しいことをしていたかを知りたいです」Pilny先生はいいます。「その時点では失うものは何もなく、得るものがあるはずです。」

Translated and distributed by Yumi Nakayama with permission of the author, October, 2014.

  • Mary Cotter

    Mary E. Cotter, M.A., Ed.D., LVT is the founder of the NY-based Rabbit Rescue & Rehab. Involved with rabbit rescue since 1982, she speaks and writes frequently on rabbit-related topics, addressing owners, veterinary professionals and shelter workers.

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